01.一番音の良いオーディオセットを作る方法はありますか?
どんな音が一番良いのかを最初に決めないと目的が定まらない。音のエジソンでは録音された生演奏の音に一番近い音を良い音としている。
しかし、他の考え方をする人が多くいて、生演奏の再現はオーディオでは無理があり、聴き方にも多くの種類があり、個人個人に合わせた音作りがオーディオの目的であるとその人達は言っています。私は少しおかしい、いや、異常ではないかとも思います。そうそう、最近のカメラで目が大きく写るのがあったりしますね。あれと同じ事です。
02.なぜ音のエジソンは生演奏の再現としての音に力を入れるのですか?
オーディオは音楽を聴くためにあると考えています。音楽家の演奏する音と同じでないとその演奏家の演奏を聴いたことにはなりません。演奏家は高いレベルで音楽を表現します。音楽家は私たちの創造を遥かに超えた表現力と知性を持っています。その音を変えてしまったら元も子もないと思います。
音楽の中にはリズムや音程が主体であり、音をかえても良い軽いものもありますが、そのような音楽は高尚なオーディオではなく家電のオーディオでも十分です。
ここで言うオーディオは文化的な音楽を再現するオーディオのことです。
名演奏の音を変えても良いならば、音楽家は名器を使用する必要もないのです。下手なオーディオでは音楽家の感情表現までも変えられてしまいます。
名演奏の音にはいろいろな表現があって音の微妙な変化が一番大事なのです。その音は表現力豊かで音楽の意味を掘り下げます。
生演奏の再現こそがオーディオが目的とするものだと思います。
ここで一つ教えましょう。ジャズの音楽が良くてクラシックが良くない。クラシックが良くてジャズが良くない。このようなオーディオシステムやスピーカーは中途半端で改良の余地が大きい。ジャズもクラシックも良くなるシステムやスピーカーは良く出来ています。「ジャズは良いですがクラシックがいまひとつです。ジャズを聴かれるならお薦めのスピーカーです。」など言われたら購入しないように。たぶん薦めた人は音楽の知識に乏しい方だと思います。そのスピーカーは硬い音がして、しなやかさの表現に乏しいのでしょう。しかし、ジャズにもクラシックにも力強い音から優しい音までいろいろな音色が必要なのです。癖の強いシステムやスピーカーではそれらの表現が偏ったり、変わったりして再現されるから注意が必要です。正しいシステムやスピーカーは録音されている音をなるべく忠実に正しい感情で表現します。レコード再生の場合はカートリッジ、トランス、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーの全部になるべく正しく再生できる機器を選ぶことです。一つでも正しくないものがあれば、その機器のレベルで音楽は再生されるのです。
03.生演奏の再現にはお金がかかるのでは?安くて良いものはあるのですか?
オーディオは大人が大事な少ない時間で楽しむものです。少なすぎる金額で良い物は不可能です。しかし、安くて良い音を目指す方法があります。それは広帯域再生を望まずに、音質再生に心がけることです。私が今まで経験した中で判断した結果、スピーカーでは一本50万円以下では生演奏の再現などと言えるようなものは存在しません。しかし、5〜10万円のフルレンジスピーカーの中には超低域や超広域を少しあきらめて使用することで非常に良い状態にすることが可能です。なるべく高能率のものを選ぶことです。音のエジソンでは409システムがあります。(現在は休止中です。)2ウエイや3ウエイのスピーカーは音を分離するネットワークが必要で音の割には割高です。また各ユニットの位相合わせがきちんとしたものは無いに等しい。低能率になるほど低音は出るが音質が悪くなり、音がボケてスピード感は劣る。ツイーターだけが元気な音で低音との音色の差が激しくなる。
アンプも高価でないものから選ぶとしたら真空管シングルアンプです。シングルとはステレオでは出力管が2本あるものです。その出力管はアメリカ製の純三極管が最高です。中国製の真空管をつけているものは避けて下さい。元々から良い音を作るために製作されたものではなく、真空管ブームにあやかって作っているだけです。アメリカ製と比較すると音質や寿命に大きな差があります。
音のエジソンにはアメリカ製純三極管6B4Gを使用したE64S-2や、同じくVT-25を使用したE25S-2があります。
最後はプレーヤーです。プレーヤーは25年前の中古でも良いと思いますがアームがしっかりしたものを選びましょう。トリオの700Dや800などが良いと思います。
音を重視するためにはカートリッジに重点を置いてください。カートリッジが音を出しますので重要です。音のエジソンではステレオカートリッジでマチュア、モノラル専用ではレプリカやスピリッツがあります。他に真空管プリアンプとMCトランスが必要です。
残念ですが音のエジソンの409システムは生産休止になりました。再開の予定は不明です。現在、カートリッジ関連やアンプの生産に追われ、非効率的な409システムを休止することを選びました。この409システムは25年以上のロングセラーで、良質のアンプを使用することで小型では最高のものです。また、1年間のエージングで非常に豊かなスリリングな音を発揮し、当店の説明文書が控えめに感じると思います。再度生産の再開が出来ますように頑張りたいと思っています。
04.この組み合わせはカートリッジが高価に感じますが。
オーディオ製品の中で一番製作が難しく開発が遅れていたものがカートリッジです。皆さんはカートリッジが小さいので高いと思われるでしょうが、CDプレーヤーですと10万円は出せると思います。。音を手に入れるにはスピーカーもアンプもカートリッジも同じレベルで判断が必要です。
05.音のエジソンのお勧め製品は皆さんの好みに合うと思いますか?
お客さんの好みには色々あると思いますが、初めて本格的なオーディオに挑戦される方は本当の良い音を知らないと思います。また誰もが同じ音を好むとは言い切れません。しかし、音のエジソンの音作りを好む方は非常に音楽好きで音楽そのものを理解されている方が多いのです。音楽ソフトも良いものが必要です。良いソフトが無いと良いオーディオが選べなく、良いオーディオが無いと良いソフトであるか良く分かりません。
私の経験ですが、昔の若い頃、クラシック音楽を聴き始めた頃のことです。ベートーベンの交響曲を選んでいるときに先輩に聞きました。ベートーベンは誰の指揮者が一番良いと思うかと、すると先輩は「やっぱりフルトベングラー」だと言いました。早速、5番の運命と3番の英雄を購入し聴いてみるとこれがモノラル録音だったのです。なんと昔の古臭い音だと思い、この時は音が悪く、演奏に感動が感じられなかったのです。しかし、私のオーディオは進化し、モノラル専用のカートリッジも手に入れました。すると、このフルトベングラーはすごい演奏だと言うことが分かり始めたのです。そしてフランス盤やドイツ盤を手に入れたときはもう宝物に感じます。今後、このような素晴らしい指揮者やオーケストラは今後現れないと確信したのです。音楽を理解するには良いソフトと良いハードが必要だと感じました。そして、古い昔のレコードが音が良いことを理解しました。
もうひとつ皆さんにアドバイスしておきましょう。「良いものは廃(すた)れない」45年ほど前にトランジスターが製品化されました。そのとき国内では真空管の生産は終了し真空管時代は終わったかのようでした。しかし、今でもオーディオ界では真空管アンプが音が良いものとして製造されています。25年ほど前にCDプレーヤーが作られるようになり、アナログレコードは完全に終わったかのように言われました。しかし、今では生産されるようになり、音が良いとして人気があります。このことは日本に限らず世界中が同じです。音のエジソンは30年前に店頭からトランジスターやICのアンプを追放しました。
CDプレーヤーはテープデッキやFMチューナーと同じレベルで考えてお勧めし、中心になるようなものではないことを伝えています。
私は永遠にデジタルがオーディオを支配する時代は来ないことを予測しています。
06.話は変わりますが、25年間作り続けた409システムを休止するというのは本当ですか?
本当です。現在は全製品が注文に追われ時間が足りないのです。そこで生産性の非常に低い409システムを休止することにしました。
07.休止ということはいつか再開するのですか?
それは未定です。中止になる可能性もあります。再生産の場合は価格が変わる可能性もあります。
08.409システムを作るには非常に時間が必要ですが簡単に作る方法はないのですか?
簡単に作る方法はありますが、今の409システムと同じものは出来ません。409システムは昔は簡単に作って価格が安かった。しかし今までの実験で今の409システムは非常に素晴らしい音になることが分かっています。音のエジソンとして前の409システムに戻すことは考えられない。そうするなら2倍の価格でも今の409システムを作り続ける。
09.そういえば昨日、新しいトイレのドアを付けに来た大工さんが出来上がりの409システムの箱を見て「このスピーカーはどこかに頼んで作ってるのですか」と聞きました。私が「いいえ、自分のところで作っています」と答えると。「ぴょー、これはわたしゃ作れんばい。ここははめ込みやろ」と言って帰りました。
「はめ込み」とは何ですか?
409システムの前板がはめ込みです。普通の大工さんは非常に面倒なのでしません。するとしたら船大工です。宮大工もすることがあります。409システムの前板は25ミリもありますので非常に面倒です。横板の四角を作り、それの大きさにあわせ殆ど同じか僅かに大きく前板をカンナで仕上げ打ち込みます。
10.現在の409システムを作ったこだわりを詳しく教えて下さい。
秘密が少しばれてしまうのですが教えましょう。
まず、木の材料は試聴を繰り返し決定しましたが赤松の集成材です。これはお店などのカウンターに良く使われます。高価でも合板を利用しなかったのは音質のためです。スピーカーの箱は音を入れると鳴きが発生します。その鳴きが合板は濁った音で、無垢材の赤松は澄んだ音です。その鳴きは音楽に同調して響きに聞こえるのです。この僅かな差が音質に影響します。
表面を平たく仕上げ、角も丸く落としました。音が広がるとき何の障害も無く広がるように仕上げたのです。そして持ち上げるときも手が痛くなりません。
箱の中は鳴きを調節するため非常に硬いタモの集製材で適度に補強されています。吸音材は真面目に高級のグラスウールを使用しています。
殆どのスピーカーは張物で仕上げられていますが、409システムは張物ではなくサンダー仕上げでニス仕上げです。これが大変手間を取り時間がかかります。
張物だと傷を気にせずに作り、最後に薄板を張るときに注意すればすみますが、無垢材のサンダー仕上げ、ニス塗り4回は傷に気を使いながらの作業です。
しかし、これも音質にこだわりを持つためです。
11.409システムはスピーカーの409をそのままではなく、少し改良を加えていますよね?
そうです。それは音のエジソンとしてオリジナルのスピーカーを実験しているとき、あらゆるメーカーのユニットを確かめました。そして、5年後に409に決定したのです。ちょうどその頃、古い名器のスピーカーを仕入れていて中にウエスタンエレクトリックのフルレンジスピーカーがありました。その音色が非常に良く、さんざん音を出して遊びました。この頃にこれを上回る安いスピーカーを作ろうと考えたのです。このことがメーカーの保障を捨ててでも改良することにしたのです。409スペシャルは更に改良し、特殊なクロスのネットワークとアッテネーターをつけることで小型フルレンジ特有の中音のでしゃばり感を押さえ帯域を少し伸ばしています。
12.そのウエスタンエレクトリックの音を超えましたか?
長くとも1年使用して頂ければ超えると思います。その間一切手を加えてはいけません。そうすることで409システムの方が生の音に近くなります。帯域も広く、メリハリもあります。
以前、お客さんから相談がありました。「他店で高価なスピーカーを買ったのだが前に使っていた409システムがどんなに比較しても音がいい。」どうしてなのか。
と言うことでした。新たに購入されたスピーカーは6倍以上の価格でした。お客さんはこれだけの価格差があり有名なメーカーだから間違いないと思って買ったとのことでした。その頃、同じスピーカーを持っていた方が409システムに買い換えられた実績が2件ありました。高ければ良いとは限りません。
13.409システムを早めに再開しましょう
再開するにはいろいろ問題がある。工作場所が住宅地の中で騒音も問題がある。今までは気を使って作業してきた。また、工作技術の問題だ。前板のはめ込みが出来る人が欲しい。最近は木材の質が悪くなっている。傷や不良箇所が多い為に材料が高くなっている。外注の事も考えたが価格が大きく上がる。半外注にすることをこれから先は検討していきたい。形が少し変わるかもしれない。
それよりも、在庫ゼロのアンプや追われているカートリッジ類の在庫を正常化するほうが先で、今のところは考えたくないですね。
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